読解力には算数・数学が効く。

成績をよくするためには読解力をつけなければならない、といわれます。

読解力をつけるには本をたくさん読ませてください、などというのがお決まりの対応ですが本当にそれだけでいいのでしょうか。

結論は「算数や数学の問題を解くことが読解力の向上につながる」です。

そもそも読解力とは何か。実は今、「読解力」の中身が変わってきています。

PISA型読解力

PISA型「読解力」の定義について、公教育の元締めである文部科学省は次のように定義しています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05122201/014/005.htm

ここで「PISA」とは、「OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査」のことです。http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/

 

定義

  • 「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」

すなわち、「読解力」とは、文章や資料から「情報を取り出す」ことに加えて、「解釈」「熟考・評価」「論述」することを含むものであり、以下のような特徴を有していると言える。

  1. テキストに書かれた「情報の取り出し」だけはなく、「理解・評価」(解釈・熟考)も含んでいること。
  2. テキストを単に「読む」だけではなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。
  3. テキストの「内容」だけではなく、構造・形式表現法も、評価すべき対象となること。
  4. テキストには、文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく、図、グラフ、表などの「非連続型テキスト」を含んでいること。

最近ではクリティカルシンキングcritical thinkingnなどともいわれますが、要するに、文章を正確に読み取ることを大前提としつつも、その内容を鵜呑みにせず、疑問を持ちつつ読みなさい、ということです。そして、自分の考えを相手が納得するように説明しなければなりません。

 

それでは、このような能力をどのようにすれば養えるのか。

一般的には日常での読書や会話を通して身につける機会が多いと思います。しかし、塾や学校での算数・数学の学習を通して、このPISA型読解力がより効果的に習得できるのではないか、というのが私の仮説です。

情報の取り出し

言葉の意味を正確に理解する

算数や数学の問題を解く場合を考えてみます。

たとえば速さに関する問題を解くことにします。

まず、何が問われているのかを明確にします。

速さか、道のりか、時間か。

このとき、「速さというのは単位時間当たりに進む道のりのことだ」という理解ができていなければなりません。「きはじ」などといって、機械的に公式を覚えようとする子どもは、この「速さ」という概念を理解していない場合が目に付きます。ですから計算式を作る場合も、速さ・道のり・時間の3つの要素と、×と÷の2つの要素の組み合わせがどれも等しい可能性を持って結びつくので、12通りの中から選び出さなければならなくなります。しかし、そんな子どもでも、「時速60kmの自動車で2時間走ったら」と聞かれれば「120km進む」という答えは自然に出せます。

ですから、問題を自分のものとして具体的にとらえるという姿勢が大切です。この「時速60kmの自動車で2時間走った120km進む」ということだけでも理解していたら、基本的な速さの問題は解けるはずです。

もちろん「じそくって何」という子どももいますが、その場合は、もう一度最初から学びなおしてもらいます。

解釈

次に、わかっている条件を書き出します。その際、線分図や面積図あるいは表などを用いてなるべく視覚的にわかりやすく整理します。すべての条件がそろっていたら問題になりませんので、何らかの条件が欠けているはずです。

簡単な問題は、これらの条件がはっきりしています。たとえば「100kmの道のりを2時間で進んだときの速さを求めなさい」という具合です。

ところが、問題が複雑になるにつれて、答えを出すための条件を整えることからはじめなければならなくなります。たとえば、「道のり120km」という代わりに「時速40kmで3時間かかる道のり」などです。


この段階で「わからない」という子どもが出てきます。この場合「わからない」は「面倒くさくて考えたくない」の意味です。

このような子どもたちは、問題をまるごと考えようとして混乱しています。ですから、問題文を一文ずつ、あるいは一文節ごとに区切りながら、線分図に表したり、面積図や表で整理したりしながら読み進める訓練をしなければなりません。


こうして、問題文を読み解くことができたら、問題の8割は解けたようなものです。残された課題は、公式にしたがって、というより言葉の定義に従って式を立て、計算するだけです。

熟考・評価

最後に、出てきた答えが正しいかどうかを確かめます。

問われたことにきちんと答えているか。

たとえば、聞かれているのは「道のりは何kmですか」なのに「時間」を答えていたり、単位を「m」で答えていたりする場合があります。

あるいは、そもそも道のりを求める式が間違っている場合も考えられますし、計算ミスがあるかも知れません。

これらのことを再度確かめたあとで、答えが出たとはじめていえるのです。

論述・表現

算数・数学の場合、式そのものが解を導く思考の跡を表現していますので、正しい解が得られていれば、誰が読んでも納得のいく表現がされているということになります。

また、自分自身も解が正しいか否かを確かめることで、表現としての式の正しさを確認することができます。


したがって、命題「算数や数学の問題を解くことが読解力の向上につながる」は真であるといえる、のか。

以上