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親子で臨む中学受験

「中学受験は親の受験である」といわれます。

親が中心的な役割を果たさなければ中学受験は成功しないけれども、手をかけすぎるとその後の子どもの成長によくない影響を及ぼしてしまう恐れがあります。そのさじ加減の微妙さが実に難しい点です。

これから中学受験の準備を始められる保護者の方へ、最終ゴールまでたどり着くためのアドバイスをいくつかあげてみます。

ただし、ここでは家庭内で中学受験の合意が得られており、両親の主導で中学受験に臨むということを前提に話を進めます。

親子の意識のずれ

中学受験では、親が受験を決め、その決定にしたがって子どもが勉強をします。親の決断と、子どもの意思が合致すればいいのですが、そううまくはいかないのが現実です。

子どもにとって受験のハードルが高くなるほど自由が制限されていきますので、その困難を乗り越えるには子ども自身の決意が必要となります。小学4年くらいまでは親の言うことに反対することも余りなかった子どもたちも、5年生6年生と成長するにつれ自分の意思を持ち始めるようになると、なぜ中学受験をしなければならないのかという疑問を持つようになります。そのとき、子どもが本当に納得して受験勉強に向き合えるか否かが、受験の成否のみならず、その後の学習にも大きく影響します。

ですから、中学受験を単なる経験として終わらせるのではなく、合格という果実を求めようとするならば、子ども自身が中学合格を望むようにしなければなりません。そのためには、学校見学や文化祭への参加などの具体的な体験を通して、中学受験が親のためではなく自分自身のものととらえられるようにすべきです。

受験の主体は誰か

受験するのは言うまでもなく子どもです。

しかし中学受験では、志望校の選択や学習環境の整備など、親が具体的な問題に直面することになります。

  • 学校の選択

首都圏の数ある私立中学の中から子どもにあった中学を見つけることは簡単ではありません。たとえ中学受験を経験していたとしても、数十年前の状況とは様変わりしていますので、受験情報を更新しなければなりません。子どもを託せる中学かどうかを見極めるにはやはり学校説明会などの機会に直接訪問したりして、学校の雰囲気に触れたほうがよいでしょう。

  • 学習環境の整備

中学受験を決意したら、家庭内の環境をそれに見合うように整備すべきです。専用の勉強部屋が用意できれば理想的でしょうが、それが無理なら家族のテレビを見る時間を制限したり音量を小さくしたりして、受験生が受験勉強に専念できる環境を作らなければなりません。

  • 学習計画の立案・家庭学習の遂行

受験勉強の中心は家庭です。もちろん塾での学習は必要ですが、あくまでペースメーカーでしかありません。塾での学習で問題の解き方が「わかった」ら、それが「できる」ようになるまで練習を積み重ねる必要があります。あるいは、塾で質問するためには、どの問題ができないのかとか、問題のどの部分でつまずいているのかをはっきりさせるために勉強しなければなりません。そのほかに、漢字練習や計算練習など基礎トレーニングを欠かさずに行って、問題を解くための基礎体力をつけることも大切です。

宿題という形で出されることもありますが、一人ひとりの学力状況は違う上に、受験は競争ですから、人と同じことをやっても競争には勝てません。子ども自身で弱点を分析したり改善計画を立てることは困難です。確認テストや模擬試験などの結果をみながら、弱点克服のための計画を親が立てなければなりません。

  • 学習の習慣化、PDCAサイクル

上記のような学習計画の立案と家庭学習の遂行のサイクルはまさにPDCAサイクルそのものです。

PDCAサイクルとは、plan(計画)、do(実行)、check(評価)、act(改善)というサイクルを繰り返すことによって業務を継続的に改善する生産管理の手法の一つです。

今、教育現場にもこの手法が浸透しつつあります。最近進学実績を伸ばしつつある高校の中には、能率手帳を学習手帳として生徒に持たせている学校が目に付きます。

高校受験や大学受験の段階では受験生自身が学習方法に頭を悩ませ、このような計画・実行の流れの重要さに気がつくのですが、小学生にそれを求めるには無理があります。したがって、日々保護者の皆さんが職場で行っているこれらの手法を取り入れることにより、お子さまの学習を習慣化させるのに役立ててください。 

トレーナーとして基礎学力をつける

漢字練習や計算練習が一人でできるようになるためには、最初は親がトレーナーとして身近で学習を見守るほうがよいでしょう。

たとえば漢字テストに備える場合、漢字練習をどのような方法で行えばよいのか子どもだけではわからないと思います。

ですから、たとえば次のような方法でテスト準備をすることを教え、実行させます。

  1. まず漢字を読めるようにする。
  2. 次に漢字を書けるようにする。
  3. 自分でテスト形式で問題を解いてみる。

また、計算の間違いは自分ではなかなかチェックしにくいものです。

計算の苦手な子どもの場合、躓きの要素を数え上げたらきりがありません。

  1. 足し算の繰り上がりができていない。
  2. 九九を十分に覚えていない。
  3. 数字の書き方が汚くて読み間違いをしやすい。
  4. その他

これらの細かい躓きは近くで見ていないとなかなか気づきにくいものですから、ある程度しっかりした計算力がつくまでトレーニングすべきです。

ここまでは保護者のみなさんが積極的に中学受験に関与すべきことを述べてきましたが、やりすぎてしまうと子どもが自ら学ぶ能力をつぶしてしまうことにもなりかねませんので、その注意点を次回以降で述べます。